大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和地方裁判所 昭和51年(わ)252号 判決

本籍

埼玉県久喜市中央四丁目一二八八番地

住居

同県同市中央四丁目六番二号

職業

病院事務員

小島アキ

昭和四年二月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官望月計介出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金一、六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県久喜市中央四丁目六番二号に居住し、かつ同所において「小島病院」の名称で医療保険業を営む納税義務者小島敏雄の妻であって、実母根岸よしとともに、右小島病院の経理事務全般を管理、掌握していたものであるところ、右根岸よしと共謀のうえ、右小島敏雄の所得税を免れようと企て、診療収入の一部を除外し、架空の人件費および薬品仕入高を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿したうえ、

第一、昭和四七年分の総所得金額が七三、九五一、四二一円で、これに対する所得税額は四〇、一二四、一〇〇円であるのにかかわらず、翌四八年三月一四日、同県春日部市大字粕壁字浜川戸五、四三五番地の一春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三〇、三五六、二九五円で、これに対する所得税額は一一、七六六、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、翌一五日の確定申告期限を徒過し、もって不正の行為により、右四七年分の所得税額二八、三五七、三〇〇円を免れ

第二、昭和四八年分の総所得金額が七九、〇一三、一六六円で、これに対する所得税額は四二、七五七、〇〇〇円であるのにかかわらず、翌四九年三月一五日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二九、〇六二、〇四二円で、これに対する所得税額は一〇、〇八九、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もって不正の行為により、右四八年分の所得税額三二、六六七、七〇〇円を免れ

第三、昭和四九年分の総所得金額が九一、四五〇、三四一円で、これに対する所得税額は五〇、八八四、九〇〇円であるのにかかわらず、翌五〇年三月一五日、前記春日部税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三一、三五七、五三〇円で、これに対する所得税額は一〇、二二七、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もって不正の行為により、右四九年度分の所得税額四〇、六五七、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書六通

一、収税官吏の被告人に対する質問てん末書二通

一、被告人作成の答申書

一、小島敏雄、大橋正洋(二通)、根岸よし、川畑時子、大島佳与子の検察官に対する各供述調書

一、収税官吏の小島敏雄に対する質問てん末書

一、大島佳与子、松本義男、町田雍男、細川高明、今泉博吉、川畑時子各作成の答申書

一、春日部税務署長小沢邦孝各作成の証明書二通

一、収税官吏各作成の調査書五通

一、収税官吏小松広記作成の「窓口収入除外分のうち裏帳記入もれ検討表」と題する書面

一、収税官吏高波富治作成の調査報告書

一、押収してある大学ノート(その他と記載のある)一冊(昭和五一年押第一三四号の一)、入院入金簿二冊(同押号の二の一、二)、税務重要書類綴一綴(同押号の三)、昭和四八年ダイヤリーメモ一綴(同押号の四)、昭和四九年ダイヤリーメモ一綴(同押号の五)、昭和四七年度事故請求書綴一綴(同押号の六)、診断書・診療報酬明細書綴一綴(同押号の七)、賞与計算表一綴(同押号の八)、昭和四七年ダイヤリーメモ一綴(同押号の九)、メモ一綴(同押号の一一)、小手帳三冊(同押号の一二の一ないし三)、名刺四八枚(同押号の一三)、名刺整理簿一冊(同押号の一四)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)、刑法六〇条に該当するところ、情状により所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科し、かつ罰金刑につき所得税法二三八条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑につき同法四八条二項により各罪所定の罰金額(ほ税額相当)を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役八月及び罰金一、六〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(裁判官 塩谷雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例